今日のシェイクスピアは『アントニーとクレオパトラ』


歴史に織り込まれたエジプトの匂やかで、猥雑な風土。エジプトの名前で、すでに独特なオーラが立ちこめる。そして、ローマ。冷徹な支配欲の町と、気まぐれな快楽の園。ふたつの大都市のあいだで揺れ動く生活原理。シェイクスピアは歴史を借りて、そこから立ちあがる美のエーテルを劇場に放った。
クレオパトラの官能美と媚態は『トロイラスとクレシダ』のクレシダをはるかに凌駕する。卑屈かと思えば、あくまでも気位は高く、そのくせ、気まぐれだ。ときにあまりに脆く、ときにあまりにしたたかだ。クレオパトラは、まさに『ソネット集』の黒い貴婦人だ。それは捉えがたい陽炎であり、掴まえたかと思うと、はるかかなたにすり抜けてゆく。
クレオパトラの死に際のエロティシズムは圧巻である。毒蛇に乳房をふくませるすがたは有名だ。そこに充満する静謐な死の時間は、エキゾティックなはるかさのなかで、死への畏怖を官能の音楽として奏であげる。『ロミオとジュリエット』でロミオがすごす最後のひとときの共感は呼ばないが、クレオパトラの最期はこのために『アントニークレオパトラ』が書かれたといってもよいくらいだ。

CLEOPATRA: Give me my robe, put on my crown; I have
Immortal longings in me.
(衣をちょうだい。王冠も載せてね。不滅へのあこがれが私を包んでいます。)
アントニーの死骸をかたわらに、クレオパトラは女王として最後の舞台に立つ。それは、シーザーへの勝利宣言であり、また、死への勝利宣言でもある。


長くなるのでつづきは⇒シェイクスピア全作品解説
覚えておきたいシェイクスピアのことば⇒ジャンル別シェイクスピアの名台詞集




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