向田邦子「幸福」を読む

この間の「冬の運動会」がよかったので、「家族熱」を読み始めたが、小説版だったせいか読んでいて全然面白くない。調子が狂う、という感じだ。やはりドラマはシナリオで読むに限る。シナリオ版を持っていないので仕方なく「幸福」に手を伸した。だが、これも肌が合わない。あまりにねちっこい。たぶん作者はあえてそれを狙ったのだろうが、生々しすぎて却って現実感をなくしている。それと反対に「冬の・・・」の方は赤の他人同士が擬似親子関係を結ぶという非日常がよかった。まるで山田太一を読んでいるような気持になった。「幸福」は筆が走りすぎている。あざとさが透けて見える。こういうのは作品としては失敗だ。舞台でもTVドラマでもこの点は同じだ。一番言いたいことは最後の最後まで隠しとおす・・・秘すれば花なのだ。