2006-06-01から1ヶ月間の記事一覧

反復のパラドックス

舞台の空気には独特の色がある。分るひとにはそれが見える。また、作品には作品の色がある。こういう色は役者の意識や知覚から絶えずすり抜けて行くものだ。だが、色がない舞台は駄作であり、失敗作であり、舞台に載せる資格を持たない。だから、役者は色を…

淡々と

連日稽古が始まったので、舞台の空気は日に日に醸しだされて行く。それにしても「初夏栄村奇譚」は短い芝居だ。今日の通しでは53分だった。やや急ぎすぎの嫌いがあるので本番までにはもう少し緩やかな運びにしたいが大筋は変ることはない。ただ、役者によれ…

ものを作る悦楽

どんなものにせよ、作ることは愉しい。いや、愉しいなどということばでは到底埋め尽くせない感情の襞の一枚一枚が悦びを歌う。舞台を作ること、茶碗を作ること、作るものは違っても悦楽はおなじだ。ただこの悦楽は青山運歩の風光にある。山が歩く姿があなた…

もの作りへの道〜大学から尼寺へ

大学でシェイクスピアや英詩を教える傍ら、学生たちや社会で働く人たちと舞台を作る試みをしているうちにいつしか26年経った。だが、残念ながら我が大学はもの作りにはほとんど関心を示さぬひとの集団であった。まあこれは日本の大学では普通のことだからあ…

かゆみの襲来

また恒例の暑さ⇒汗⇒かゆみという循環が始まった。これを何アレルギーというのかは知らないが、考えてみるともう5,6年前から(いや、もっと前か?)年中行事になっている。今年は花粉アレルギーがだいたい終熄したかな、と安心するかしないうちに汗アレル…

追い込み

「初夏栄村奇譚」、本番まで残す稽古はあと12回を切った。今日は衣裳を着ての稽古をした。衣裳は世界の色を引き立ててくれる。役者の色、囃子方の色、運歩方の色……もちろんそういう特定の色があるわけではないが、舞台上の空気が「色めき立つ」ことは確かだ…

時節の窯変

あらゆるものにはそれぞれの時期がある。生まれ、育ち、熟し、そして、遂には、衰えて行く。そういう時の継承は宿命として受入れられて来た。だが、楽しみの時節は実にきまぐれだ。そのきまぐれさ加減は丁度、よくできた器の左右非対称のように、予期や期待…