面と線と

T先生にデッサンを習っているのだが、これがなかなかむずかしい。美術をやっているひとにとっては当り前なことが初心の私には仰天するほど新しい。

拳を描く。私は人差し指と中指の間の線から始めていた。T先生からダメ出しを受けた。手に白布を被せ、そうして出来たシルエット全体を立方体の三つの面で見る訓練をしなさい。そして、エンピツは出来る限り寝かせて使うこと。

何ということだろう。何という翻訳作業だろう。

その時はすぐにでもできる気になっていたが、いざ、やってみるとどんなにエンピツを寝かせてもやっぱり線から描いてしまおうとする私がいる。こいつぁ難物だぜ。