思えば遠くへ来たもんだ

必要があって中也の『在りし日の歌』をひもとく。なかに「頑是ない歌」というのがある。出だしは


思へば遠く来たもんだ
十二の冬のあの夕べ
港の空に鳴り響いた
汽笛の湯気(ゆげ)は今いづこ
である。

ん?どこかで訊いた覚えが・・・。

そうだ、武田鉄矢の歌だ。同名の映画の主題曲だ。仮名遣いと「遠くへ」の「へ」が加わっているが、ここから採っていたのだ。知らなかったな。


今では女房子供持ち
思へば遠く来たもんだ
此の先まだまだ何時までか
生きてゆくのであらうけど
この辺もほぼそっくり採用されている。

著作権を言うのではない。私は著作権などというものは文化をだめにすると考えている。でも、中也の方はフリーで、そこから採った鉄也の方には高い著作権料がついて回るという現状には苦笑いするしかない。著作権協会はとにかくあこぎだからね。著作権ではなく自分の利権を守っているだけの天下りの温床は一刻も早くつぶしてしまった方がよい。