スローなブギにしてくれ(1981年)

野良猫のような女子高校生が破滅癖から抜出せない中年の男とやんちゃな青年のあいだを行き来するうちに自分の道を見つけるややひねりの加わった青春グラフィティ。

そんな性悪中年(ちょい悪どころか極悪だ)を山崎努が好演している。

もうすぐバブルが沸々と湧上がる昭和景気の真っ只中の映画だ。

破壊の通奏低音がずっと鳴り響いている。戦後から懸命に作り上げた既成の人間関係を闇雲にこわそうとしている。目に見えないものを持てあましている。だから、こわすことに価値がある、と信じるかのように。こわして、その後、何かを創るといった思想はない。ただこわす。いや、エンディングで無理心中に失敗し中年男は生残ることに表されているように結局はこわせないのだが。

そういえば、この間見た「の・ようなもの」も1981年だった。

みんなカッコ悪い。切ないくらいカッコ悪い。それがたまらなくいい。今の時代ではこんなカッコ悪いことをする勇気はない。うすくうすく、「カッコよく」しか生きられないのだから。それだけ反発するに足る価値があの時代にはまだ厳然と、あるいは、なかば亡霊のように、あったのだろう。

そして、時代は進み、かずかずの破壊と幻滅の果て、今のような空気の薄い時代になったということだろうか。

どこかのブログで、当時としてはお洒落な映画化も知れないが、今ではさすがに古い、などと間の抜けた批評をしていたが、それが現代を見事に象徴している。「お洒落」かどうか「新しい」かどうか、そんな横並びのことばかり気にしている。映画はもっと底を見なければ面白くない。時代が経った方が映画の底が気持よく掘れるものだ。

浅野温子の映画デビュー作でもある。当時の浅野温子得も言われぬ色香に満ちていたなと、哀惜の念さえ感じながら、思う。

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