シェイクスピアの匠

昨日の読書会は朗読大会になった。読んだのはシェイクスピアの『夏の夜の夢』の冒頭の台詞。


Now, fair Hippolyta, our nuptial hour
Draws on apace; four happy days bring in
Another moon; but, O, methinks, how slow
This old moon wanes! She lingers my desires,
Like to a step-dame or a dowager,
Long withering out a young man's revenue.
じつに楽しかった。
昔、友人のシゲキヨ君が勤め先の同僚(イギリス人)とパブで飲みながら、覚えているシェイクスピアの台詞を朗読し合ったという話を聞いてうらやましい思いをした。あろうことか、彼はオックスフォード卒のイギリス人に向って'Your pronunciation is bad.'(お前は発音が悪い)と言ったそうだ。それに対して相手は'For lack of education.'(教育がないもので)と応じたという。紳士の国のユーモアを感じさせる。

しかし、たった今、私は大きな思い違いをしていたことに気付いた。私はこう読んでいた。


Now, fair Hippolyta, our nuptial hour draws on apace.
Four happy days bring in another moon.
But, O, methinks, how slow this old moon wanes!
She lingers my desires, like to a step-dame or a dowager,
long withering out a young man's revenue.
歴史的名演と言われたピーター・ブルック演出の『夏の夜の夢』のテープがある。聴いてみるとアラン・ハワードも同じように読んでいる。というより私がアランの台詞を何度も聴いて真似をしたのだ。
突然こんなことを言いだしたのは、ジョン・バートンの講義ヴィデオ(Playing Shakespeaere)を思い出したからだ。彼はシェイクスピアが何故そのように行分けしたのかという点にこだわっていた。彼は役者たちにしつこく行末でポーズを取るように指示を出していた。
意味から言えば後の方の読み方がすんなり入ってくる。しかし、それだったらそう書けばよいではないか。シェイクスピアの時代にはそういう書き方が存在していた。その気になればそう書けたのだ。
今考えているのはそこにシェイクスピアの匠があったのではないかということだ。まだ私にはその姿が見えて(聞えて)は来ないが・・・