Playing Shakespeare

かつて、RSCがイギリスのチャンネル4で放映したPlaying Shakespeareというシリーズがある。シェイクスピアはどのように演じるべきかを様々な角度から実演を交えて解説した非常に興味深い番組だ。全体の監修、解説をジョン・バートンが行っているが、その中で感情表現に関するシリーズがあった。『ヴェニスの商人』の開幕の台詞

  ANTONIO. In sooth, I know not why I am so sad.(いったいどうしたわけでこんなに気が滅入るのだろう。)

イアン・マッケランバートンの指示に従って、ある時は悲しく、ある時は滑稽に、ある時は自虐的に、感傷的に、瞑想的に、あるい、もうどうともなれといった風に演じ分けてみせた。

すべてすばらしい演戯だったが、バートンはそれをすべて否定した。感情はひとつの色で台詞を塗り込めてしまうから、という理由からだ。人間の振舞いはそんな風に一律のものではない、というのだ。

これには見ていながら思わずうならされてしまった。こういう質の高い番組を作れる国が羨ましく思えた。真矢何某にも、松嶋菜々子にも見せたいものだ。