初夏にしたものの

夏芝居の外題を「初夏栄村奇譚」としたものの、初夏とは五月はじめから六月はじめまでを言うのだから、公演初日の七月七日時点ではもう初夏ではない。はじめは「梅雨明け〜」という題を考えていたのだが、評判がよくないので急遽「初夏〜」に替えてしまったのがいけなかったか。

いやいやそうでもなさそうだ。晩夏(七月初旬)から初夏を顧みると考えるといい方向が見えてきそうだ。回顧(retrospection)の空気を吸ってみようか。

だが、台本は進んでいない。相変わらず目の文字馴らしの段階だ。梓林太郎の山岳推理小説を楽しく読んでいる。今日で6作目だ。どれもみな良質だ。内田康夫とは段違いだ。過去形の「だった」「した」を何度も畳みかけるのでときに文体の単調さが気になるが、見ようによってはきびきびした登山のリズムとも受け取れる。

登場人物案、呆けているが、お茶目な老女ゑたい(妓娃尼)、理屈っぽい留学生ナワン(世津)。あとはまだ(もう?)霧の中。