突然の僥倖

「初夏栄村奇譚」の台本が完成した!奇跡のようだ。ついさっきの出来事だ。午前中はどうも理に落ちた構成に嫌気がさしてにっちもさっちも行かなくなっていたので、台本を接ごとに細分して印刷し、大学のグランドで風に向って投げた。ちょうどよい風が吹いていた。すぐ近くに落ちる頁もあれば、どんどん風に乗って飛んで行くのもある。一旦落ちてからまためくられて飛んで行くのもある。風が小やみになったのを見計らって近いのから拾い集めた。

登場人物の出入りなどはぐちゃぐちゃになっていた。場面のつながりも当然支離滅裂だ。それがよかった。風のめぐみだ。風の送った通りを原稿に移し、意味不明になったト書きを整理したら、もう出来上がっていた。理路整然が見事に吹き飛んだ。自分だったら絶対に思い付かない場面のつなげ方がいくつもそこにあった。理を裏切るに理を以てしても不可能なことを知る。理は非理だけが超えるのだ。風の非理よ多謝。