花を満喫

今年は桜を堪能できた。去年は花を楽しんだ記憶がない。打って変わって今年は花を愛でること数度……つぼみを楽しみ、五分咲を楽しみ、満開を楽しみ、散る花を楽しみ、葉桜を楽しむ。

ただ、美しさに酔いしれたのは一度だけだった。やはり桜は晴天の下が一番美しい。前橋の国体道路の桜並木を通ったのは二週間ほど前だったか、ほどよい風、あふれる陽光に満開の桜が応えていた。

同じ満開でも曇天のもとでは桜はくすむ。くすみの美というものもあるにはあるが、こと桜に関しては華やぎを減殺するだけだ。

夏芝居「初夏栄村奇譚」の台本に散る桜をフラッシュバックで挿入した。雨、雨、雨、五月雨、そして、梅雨の初夏模様のなかにひとつ位は明るい場面もいいかなと思ったし、ひとつ前の芝居を引き継ぐのも遊びとしても面白いと思った。

「地螢」では「双子山古墳の桜はまだかい」と問うていたので「初夏栄村奇譚」では桜吹雪を出してみた。

まだ、桜の余韻の中にいるが、そのうちに初夏がやって来る。季節としても稽古場の空気としても。楽しみだ。