鉛筆の線の向う岸

すでに書いたように、デッサン(厳密にはクロッキー)を週に一度習っているのだが、美術の世界は本当にすごいと思い知らされることしきりである。

自分ではもうこれ以上手を加えることはない、と信じて師匠のもとに向うのだが、いつもメタメタにやられてしまう。指摘されるとまさにその通りなのだ。眼の秘儀、そして、秘技とでも言おうか、見抜く力のすさまじさにやられる。この伊賀の水差のクロッキーも、また、めった切りの目に遇うだろう。

絵を描くこと、つまり、三次元を二次元に移し替えるというパラダイムシフトを人類はもう何百年も(いや絵画という意識的な枠組を外せば、何千年何万年も)生きてきているのだ。たぶん、その代償なのだろう、画家は彼岸という二次元も三次元もない世界へ移り住んで初めて評価を受ける。