初西瓜を食す
今年になって初めて西瓜を買った。もう大分前から店頭に並んでいたので見てはいたのだが、西瓜は夏だろう、とあえて買うのを控えていた。だが、どういう風の吹き回しか、とつぜん西瓜が私を呼び出した。目に止まったのは六分の一カットほどの大きさだった。糖度10とある。遮二無二食べたくなった。
西瓜を食べると胸に一瞬sweet pangsが通りすぎる。太宰治は胡瓜について次のように書いている。
はじめて、キウリをたべる。キウリの青さから、夏が来る。五月のキウリの青味には、胸がカラッポになるやうな、うづくやうな、くすぐったいやうな悲しさが在る。
西瓜も瓜科だ。悲しさの根は同じかも知れない。