放散の日つづく
このところ何もせずただぼけっとしている。といっても本当に何もしないというわけには行かないのが人間だ。
TVを見る、ギターで歌う、珈琲を淹れる(ニカラグアがことのほか甘くて美味しい)、食べログで近くの美味しそうな店を探しては出掛ける、温泉に行く、白波五人男の連ねを一人づつ暗記する(今、赤星十三郎まで来た)、欠けた歯の修繕に歯医者に通う……
何かはしているわけだ。ただ具体的な目的をもったことをしないでいるだけだ。一応自分の中ではエポケー(行動停止)の時間帯ではある。よく言えば高等遊民、ありていに言えば怠惰な生活……まあ、そういう風にしかみえないだろうな。
おそらく(願うらくは)そのうちに尽十方世界に何かが蠢き出して、何かをせずにはいられない気分になるであろう。取りあえず今は草枕の旅にのらりくらりと放散している。
といって、露堂々と澄ましていられるほどちりあくたから自由ではない。彩雲堂の和三盆「露堂々」はこの上なくうまいが、私の露堂々は手持ちのギターのようにすりキズだらけだ。でも、のほほんと楽しいすりキズではある。
私のミューズよ、あまり長く背を向けつづけて下さるな。