コスタリカの憂鬱
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初めては二度とない
二度目からは陳腐になる
天候の安定しない五月である。
頼んでおいたコスタリカ産の珈琲豆が届いた。さっそくグァダルーペ農園の豆を挽いて飲んでみる。香りが匂い立ち、居間にあふれる。舌の奥の方にコスタリカ独特の赤葡萄酒のようなコクを感じる。
私は大の珈琲好きというわけではない。以前は必ずクリームと砂糖を入れて飲んでいたくらいだ。ある時珈琲店の店主に勧められて買ったコスタリカ産を飲んでからようやくストレートで飲めるようになった。その時の味わいは格別だった。たまたまいくつかの偶然がいい方に重なっていたのだろう。珈琲に酔うことがあるのだとその時知った。
コスタリカ豆は後味が抜群によい。甘いヤニのような、とでも言うのだろうか(もっとも、ヤニを味わったことはないが)ちょっとクセのある味わいがたまらない。
とは言え、珈琲を淹れるのは一日に一杯、時に二杯だ。だから1kgも買ってしまうとなかなか減らず、香りが飛んでしまうのが悩みのタネだ。周りにコスタリカ党が5、6人いてくれればいつも香りのよい珈琲ばかり楽しめるのだが……。