覚える
∴
ちびの大風
地上を吹き抜ける
新しいことを身に付けるのにひとはどれくらいの時間を必要としているのだろうか?
赤ん坊の学習能力の高さを見ていると、もっと知りたいという欲求の素晴らしさを思う。おそらくそれは本能によって突き動かされているのだろうが、まさにスポンジに水が染み込むがごとき貪欲な吸収力である。
私の年代になると学習の様相は一変する。
身に付けるのではなく、むしろ、振り捨てることが肝要だ。忘れることはできないが、選ばないという選択は可能だ。そういう無為のかなたに見えるものがあるはず、と信じて断念、截断をつづける。何となくそれが見えつつあるような、ないような、そこはかとない頼りなさの中の陽炎。それを林住期の智慧と言うのかも知れないが、私の実感ではキーツのnegative capability(否定的能力)の方が身近に感じられる。
正解は
ほおづきの花。
植えたわけでもないのにいつの間にか春になると何十本と生えてきて、花らしくない花を咲かせ、赤い実を恵んでくれる。