小窯
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朝は寒く
昼は暑く
夜はまた寒い
いのち咲くむくげに馬を送らばや
新しくやって来た小窯もまたむずかしい。
まだ二度しか焚いていないが凡庸な結果しか出ていない。明日またいくつか入れて焼成試験を行う。これまでの焼成曲線に囚われすぎているかも知れない。小窯には小窯の能力発揮の流儀があるのだろう。
まず、これまでの窯と冷却時間がまったく違う。徐冷は不可能なので、急冷に向いたものしか焼けない。黒はそういう意味ではよい。
次にバーナーの力が弱い。勢い攻めに入ってからだらだらしてしまう。釉の融け具合を見ると面白味のない融け方をしている。単一バーナーなのだから八方美人でなくてもいいのに、と思う。妙によくできている窯なのだ。
焚き方に問題があるのだろう。むしろ、がつんと短期決戦の方がよいのかも知れない。
というわけで、明日は器を破壊する覚悟で油量をがんがん上げて一気に焼き上げる予定だ。8時間くらいで上げられたらと思う。
並行して11月の芝居の台本を書き始めているのだが、進んでいない。窯のことに気を取られて……というわけではない。からだが台本モードに飛び込めないのだ。台本を書くときは謂わば天下を取ったようなある種の傲慢さが必要だ。去年秋から体調を崩して、あの独特な気分を取り込めない。誰だった忘れたが、ものを創り出すには狂気が必要だと、言っている。額縁の中の傲慢と狂気。