痛みのマント

からだの痛みというものは何と視界を狭くして、気力を奪う闇なのだろう。その上、痛みは本質的に他人には分らない自知の領域に属しているので、喜びや悲しみのように伝染することがない。立っているだけで冷や汗が出る痛みは本人には一大事だが、センター試験の監督の割り振りをする担当者や、運悪く私の代役をさせられた者から見れば、あやしげな振舞いでしかない。この辺が人間の限界というところなのだろう。

しかし、そういう思いそのものも闇の奥から滲み出たものなのだから、精神の均衡が健全に保たれているかどうかの自信はない。こういう時は我ながら呆れるほどひがみっぽくなる。已んぬるかな。