名残の瀬戸

その土地を去るということはそこに住む人々とも別れることになる。絶対に会えなくなるわけではないが、そう簡単には会えない。瀬戸を去るに際してそれが一番さみしい。

工房のかたづけが一段落した今、別れの挨拶をしている。ひとにはひとそれぞれの空気がまつわりついてそのひとの雰囲気を醸している。いつも遠くを見はるかすまなざしをしてひょうひょうと生きているThreeFieldsさん、武人のように身じろぎも、まばたきもしない毅然としたU-Ropeさん。今日はこのお二人と名残を惜しんだ。

そのひととほんの束の間の時をともにするだけで多くを与えてもらうことが出来る。私はもらうばかりで少しも与えることが出来ない。でもきっと、まずは頂きものの蔵をいっぱいにしないとひとに与えられるようにはならないのだろう。だから今は貪欲に頂こうと思う。

頂きものとはゲルマン語でgift、そのまま日本語になってギフトだが、天賦の才の意もある。天が選りすぐったひとに賦与した才のおすそ分けに預ろうという魂胆だ。

でも私の蔵はがらがらでいつまで経ってもいっぱいになりそうにない。