ことばの迫力

大統領を勝ち取ったとき、オバマ氏は次のように国民に呼びかけた。


Let us summon a new spirit of patriotism, of service and responsibility where each of us resolves to pitch in and work harder and look not only at ourselves, but each other.
気持を新たに呼び覚まそう、愛国心を、奉仕の精神を、そして責任感を。私たち一人ひとり今ここにその新しい気持で、助け合い、もっと働き、自分たちを見つめるのみでなく、互いを見つめ合うことを決意したのだ。
これをTimes On Lineで読んだとき、一番最初に思い出したのはJ.F.ケネディ大統領の演説だ。哀しいかな、我が国の首相からこれほどの重みをもったことばが発せられる様を想像することはできない。
もちろん、この名文を彼ひとりで考えたとは言わない。大統領の重要な演説はブレインによって草稿が作成されるという。そのブレインには詩人、劇作家も入っていると聞いたことがある。昨日のブログで文学の力を忘れ去った日本人を嘆いたのだが、この演説を読んでますますそのショックが大きくなった。
この演説はあきらかに国民一人ひとりに向けられている。国民に呼びかけている。この凛々しさはどうだろう。私は基本的にアメリカは嫌いだ。アメリカ贔屓でこんなことを言うのではない。ひとがひととがこんなに生々しく、こんなにおごそかに関わり合えることにうらやましさを覚えるのだ。こういうことばを発する場こそ「劇場」と呼ぶにふさわしい。ケネディの演説には品格が具わっていた。そこに感じたのと同種の気韻をこの文章から感じるのだ。ただ、私のつたない翻訳でそれが伝わらないのが残念だが。