ためつすがめつ
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いのししが目の前で悠然と田畑をあらしていた
あちらにしてみれば、食事の最中
こちらから見れば、迷惑千万
伊羅保釉試験の器を昨日から手に取ったり、お茶を飲んだり、じいっと見たりしている。
最初は一種の固定観念にしばられてまともに見られない。その時間が過ぎるまで待たないといけないのだ。
ふわっと呪縛が解けて判断力が解放される。伊羅保、伊羅保と思っているから目が観念に縛られる。たまたま頭から伊羅保が消え去る瞬間があった。
なんだ、この釉はこのまま柿の蔕に使えるじゃないか……
そう思ってみるとまさにその通りだ。ずっと探していた釉調がそこにあった。
発見というのは面白いものだ。それでも、土と釉と窯と揃わなければ発見にまで至り着かない。あることがむずかしいという意味で、実にありがたいことだ。
あとはろくろの修練だ。牛ベラ使いの稽古だ。まだ樋口が洗練されていない。もう一歩のところまでは来ているような気がするのだが、その一歩が遠い……