今日のシェイクスピアは『アセンズのタイモン』

 アテネの貴族タイモンは、友情に篤く、持ち前の気前よさから、困っているひとがあれば、莫大な財産を惜しみなく分け与え、豪勢な宴会を催していた。財産目当てに近づいてくる人々を友と呼び、その真意を疑わおうとしないタイモンを、皮肉屋の哲学者アペマンタスはあざ笑う。そのうちにタイモンの財源は底をつき、借金だけがかさんでゆく。
 やがて、執事フレイヴィアスから自分の財産の実情を聞かされるが、タイモンはまだ事の重大さに気づかず、かつて恩を施した友人たちに一時借金を申し出れば、わけなく負債の返済はできると考えている。しかし、タイモンの窮状を聞かされても、彼に財を貸そうとする者はひとりとして現れない。それまで友と信じてきた者たちの実態を知って、タイモンは怒りと絶望のあまり狂気に陥る。このままではすまされないとばかり、みなを招待すると、恥知らずにも集まってきた貴族たちに、湯だけの料理を出し、罵声と湯を浴びせかけ、ついには皿を投げつけて追い返す。
 人間嫌いの鬼と化したタイモンは、ひとを見れば、畜生呼ばわりし、誰彼の区別なく毒づいている。あるとき盗賊に襲われるが、欲しければやるぞと金貨を投げつけ、人間への呪詛を浴びせ、盗賊の方がそのあまりに厭世的なことばに震え上がり、この世の幸せを願うほどである。再び仕えようとやってきた忠実な執事フレイヴィアスと話すうち、一瞬、温かい気持になるが、すぐに鋭い呪いのことばで追い返す。
 タイモンが大金を手に入れたらしいという噂を聞きつけた人々や、アルシバイアディーズの反乱を鎮めるため彼の力を必要する元老院議員らが、洞窟を訪れる。だが、ひとを呪い、世を捨てたタイモンは、聞く耳を持たない。アテネはアルシバイアディーズの反乱軍に降伏する。戦わず勝利を得たアルシバイアディーズのもとに、タイモンの死が伝えられて劇は終わる。

TIMON: My long sickness
Of health and living now begins to mend,
And nothing brings me all things.
(長わずらいもようやく治りはじめた。無一物になって、すべてが手に入った。)
まるで禅の悟りのようなことばに息をのむ。『リア王』では「無からは無しか生じな」かったが、ここに悲劇からロマンス劇への思想の転換が見て取れる。


長くなるのでつづきは⇒シェイクスピア全作品解説
覚えておきたいシェイクスピアのことば⇒ジャンル別シェイクスピアの名台詞集



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明日、窯焚き こんな感じの焼き色が出ればなあ



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