今日のシェイクスピアは『リチャード二世』


いわゆる第2四部作(『リチャード二世』、『ヘンリー四世第一部』、『ヘンリー四世第二部』、『ヘンリー五世』)の最初の作品。全編韻文(弱強5歩格)で書かれている。作品中に散文がまったくないのはこの劇と『ジョン王』の2編だけだ。
イギリスの歴史を勉強して王政を取りまく事情にくわしくなってからもう一度読んだら『リチャード二世』の見方はがらりと変わるだろうが、それまではひとまず、器でもないのに王に生まれついてしまった人間の転落の悲劇として見るといい。それだけでもずいぶん見どころの多い劇だ。
それにしてもリチャードとボリンブルックの人間の違いようはどうだろう。冷徹でたくましい現実家のボリンブルックと、残忍なくせに無能な夢想家のリチャード。最初、卑劣でわがまま放題の暴君リチャードにいらだちを感じるものの、退位後のリチャードには弱者の威厳ともいうべき不思議な気品がみなぎっていて共感を覚える。リチャードは身の破滅が近づくにつれ、みずからをキリストになぞらえるが、そうした受難劇風のふるまいも共感の助けになっている。
誰もが正義をふりかざして行動するが、その正義もなんらかの悪の上に成り立っている。ボリンブルックは一見正義を貫いたかに見えるが、英国王室の恥ずべき混乱、薔薇戦争の遠因はここにあり、政治に全面的な正義はないことをシェイクスピアは暗に語りかけているようだ。


KING RICHARD. With mine own tears I wash away my balm,
With mine own hands I give away my crown.
(われとわが涙で香油を洗い落とし、われとわが手で王冠を手放す。)
ボリングブルックから力ずくで退位を迫られたリチャードは王権をみずから剥奪する儀式を演じたあと、王位を譲る。

余談になるが、1601年エセックス伯はエリザベス女王に対する反乱を起こす。その前夜、シェイクスピアの劇団に『リチャード二世』を上演させた。反乱は失敗し、エセックス伯は死刑になった。



長くなるのでつづきは⇒シェイクスピア全作品解説
覚えておきたいシェイクスピアのことば⇒ジャンル別シェイクスピアの名台詞集



焼きなおしてみたものの・・・
f:id:aien:20190525205629j:plain



いつもおつき合い下さりありがとうございます。応援よろしくm(_ _)m
画像をクリックしてランキングサイトが表示されれば投票終了

f:id:aien:20190416065119j:plain



にほんブログ村 美術ブログ 陶芸へ
さらりと脱原発