声の力
声には不思議な力がある。さっき訓練校同期生から電話があり、彼の声を聞いた途端に瀬戸の光景が浮かんできた。
声はひとを睦み合いの輪へと溶かし込む釉薬だ。最近はほとんどメールやりとりになっているのでなかなか声を聞く機会がないので、余計に新鮮な感じがする。
W.J.オングの名著『声の文化と文字の文化』でも言われているが、声には共同体を生み出す力がある。それを悪用しているのが振り込め詐欺だ。これもオングが書いていることだが、声の文化ははじめから疑いや批判を内に宿していない。そこに付け込むのだから卑劣極まりないやり口だ。
最初オングの説を読んだときは、それってホント？と訝しんだ（文字の文化の作用である）が、こんなにマスメディアで喧伝していても振り込め詐欺を根絶できないところを見ると、オングの説は正しいのかも知れない。
