ラブストーリー

明日で「ラブストーリー」の再放送が終る。
つらつら考えた。このドラマのなにが気に入らないのだろう。
脚本はいいと思う。ときどき山田太一を思わせるような内的独白が日常に亀裂を入れる。いい書き手だと思う。
孤独な作家を演じる豊川悦司も悪くない。個人的にはそれほど好きな役者ではないが登場人物をよくこなしている。
周囲の人々も、HEROの脇役たちほど輝いてはいないが、よい。
結局このドラマの不完全燃焼の原因はヒロインにあるようだ。いや、ヒロインはよく書けているのだが、問題はそれを演じる女優にある。すべてが悪いというわけではない。恋の切なさはよく出ている。ただこの役はただキレイなだけではとてもこなせない。キレイなだけな女優がドラマの中で臆面もなく「私ってキレイじゃない」などと言うとイヤミにしか聞えないのだ。ドラマは資生堂のCMのようにはいかないということだ。
道化にもヒロインにもなれる女優が必要だったのだ。中山美穂は冷ややかな美人である。道化の温気に欠けている。今日も作家と二人きりになる場面でそれが露わになってしまった。登場人物がとまどっているというより役者が(そして、演出も)とまどっていた。
誰だったらよかったのだろう。年齢を無視すれば永作博美だろうか。彼女だったらヒロインに幅が生まれたろうなと思う。今日の二人きりの場面で作家(豊悦)や演出にノリを与え、ただ守るだけの場面から一転、別な場面に大きく変えてくれたろう。現場は正直である。できないことはできないが、できるとなるととんでないほどの飛翔が起る。(だから芝居はやめられない)
ないものねだりをしても時間は戻せないから不完全燃焼は不完全燃焼のまま残る。その点、舞台はひとの記憶にしか残らないのである意味では幸せだ。映画やTVドラマは残酷である。

工房で器を取込み家に帰る途中道ばたを見ると、足をケガした猫が定位置にうづくまっていた。まだ動けないらしい。