今日のシェイクスピアは『間違いつづき』

シェイクスピアの初期の作品とはいえ、登場人物をくわしく見ると様々な工夫が凝らされていることが分かる。何度も取り違えられる双子はほとんど区別がつかないように書かれてはいるが、よく観察すると旅人アンティフォラスと町人アンティフォラスのことばにはそれぞれ漂白のイメージと定住のイメージが振り分けられており、単に筋を運ぶために必要な情報を与えるだけでなく、作品をより人間的な世界として作り上げる配慮がされている。たとえば旅人は「さまよう」(wander)、「溺れる」(drown)、「失う」(lose)という旅の危険を感じさせることばを使い、いつも自信なさそうにふるまい、それに対してエフェサスの住人は「坐る」(sit)「食事」(dinner)「家」(home)など定住を感じさせることばを使い、たとえ自分の家に入ることを拒まれてもなお頑固にふるまうだけの自信にあふれている。解決不能な事態に陥ったとき旅人は自分が狂ったと疑うのに対して、エフェサスの住人はまず相手が狂っていると思う。


地球儀が発明されたのは1492年だが、この作品には天文学的、地理学的知識が面白おかしく利用されている。太った台所女中から亭主と思いちがいされてドローミオは逃げ回る。その途中で主人のアンティフォラスに出会い、自分を追い回す女の説明をする。

 She is spherical, like a globe; I could find out countries in her.
(そいつは丸くって、まるで地球でさ。その気になりゃ女のからだでお国めぐりができますぜ。)

そういって彼女のからだからアイルランドスコットランド、フランス、スペイン、さらにはアメリカやインド諸島まで探し出してみせる。アメリカの名前がシェイクスピアの作品に登場するのはここだけである。


古典的劇作法のひとつに三一の法則(three unities)というのがある。それは劇を作る際に守るべき条件を示すもので、まず最初の一は、作品の舞台がひとつの場所であること、つぎの一は、劇の筋立てが朝に始まり夜までに終ること(一日)、最後の一は、筋がひとつであること、という規則だ。シェイクスピアがこの法則を守ったのは初期の『間違いつづき』と最後の作品『あらし』だけだったというのもおもしろい。概してイタリアやフランスの作家はこの法則を守ったが、イギリスやスペインの作家は法則にとらわれず自由な劇作をしていた。シェイクスピアもそのひとりだ。

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雪雪雪
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夏タイヤに換えなくてよかった~!



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