光陰

光陰

私はつい先ほどここに来た
私はもうずいぶん立ってゐた
私はとうの昔に消え失せた

それが《鏡の私》の物語

朝が来ると私はあちらを覗き込み
昼には向う側の眼がこちらを覗き
夕闇には鏡だけがそこにあった

それが《私の鏡》の物語

いつのまにか鏡は消えて
私が、やあ、と言ふと
ひとが、やあ、と答へるやうになった

それが《この世の夢》の物語

やあ、私
やあ、おまへ
やあ、やあ、やあ
ビートルズがやって来た