フルトヴェングラーを聴く

図書館にフルトヴェングラーベートーヴェン第九交響曲を振ったCDがあった。オーケストラはバイロイト祝祭管弦楽団。解説によると第二次大戦後初めて開かれたバイロイト音楽祭の初日に演奏された歴史的演奏の実況録音だという。
最初の印象を正直に言うと、何と鈍重な演奏だろう、だった。
今どきこんな重苦しくて無骨な演奏は学生オケでもやらないだろう。
実録だから演奏のミスもある、ホルンなど音程がきわどく外れている。最後などは指揮者はいないに等しい、完全な無秩序状態とでも言おうか。普通、最後の音は合うのが当り前だ。それが全然合っていない。私の好みがうるさいとか言う次元ではない。誰が聴いてもこんなバラバラな演奏があり得るのかと耳を疑うことだろう。
でも、いいのだ。ものすごくいいのだ。モノラル録音で、その上録音状態も悪いから弦の音などガシガシささくれ立っている。やきもので言えばバリが出ているのだ。悲惨である。
それでも、いい。こんな骨格の大きな演奏はもう出来ないだろうと思う。
品のいい、お洒落な演奏は山ほどある。だが、まるでベートーヴェンがそこで第九の初演を振っているのではないかと思わせる演奏はない。それくらい荒削りだ。ほとんど耳の聞えない作曲家が必死にタクトを振った初演は(聴いたわけではないが)こんなものだったのではなかろうかと思わせてくれる。聴衆は熱狂していたという。ベートーヴェンはその叫び声が聞えず振り終えて茫然としていた。その彼をソプラノ歌手が客席へ振り向かせた。
いつ思い出しても感動するエピソードだが、バイロイトの第九のエンディングを聴くと、もしかするとフルトヴェングラーはそんな初演の混乱と熱狂をもう一度、世界大戦終結後の疲弊しきった人々に実現して見せたのではないと思いたくなる。

ベートーヴェン:交響曲第9番《合唱つき》[バイロイトの第9/第2世代復刻]

ベートーヴェン:交響曲第9番《合唱つき》[バイロイトの第9/第2世代復刻]

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